
日本語で使われている漢字語の場合でも、韓国語で読んでいる場合はほとんど放送禁止用語とはならないが、「忘年会」や「手順」「十八番」など漢字を韓国語読みしていても、放送禁止用語となる場合がある。日本語読みのものはすべて放送禁止用語である。
- バラエティでも日本語は不適切 -
昨年七月、韓国の人気バラエティ番組で「ユック・サシミ(刺身)」という言葉を使ったとして問題になった。問題になったシーンは、番組のレギュラーが食堂で「ユック・サシミ!!」と注文をするところで、画面の下には「ユック・サシミ」とテロップも流れていた。これに対し「不適切な用語の使用」という視聴者からの指摘を受け、最終的に番組の制作担当者たちは、「正当な指摘だ。出演者が外来語を使ったのは明らかで、出演者が放送に不適切な言葉を使ったとしても番組制作側がそれを編集すべきであったのが、不注意であった」と、誤りを認めた。
「ユック・サシミ」は、日本語と韓国語が混じった造語である。「ユック」というのは韓国語の「肉」を表す言葉であり、「サシミ」とは「刺身」のこと。韓国には生の牛肉を食べる「ユッケ」があるが、それは生の牛肉を味付けしたものであり、「ユック・サシミ」というのは、「馬刺し」のように味付けされていない生肉のことである。
「ユック・サシミ」がなぜ問題になったのか。韓国は日本の植民地統治下に置かれたことがあり、当時の韓国人は韓国語の使用を禁じられ、日本語の使用を強要された。そのため、純粋な韓国語の代わりに日本語が日常生活に浸透した。韓国人同士で話をするにしても、韓国語の読み方ではあるが、純粋な韓国語ではない、日本の漢字語を韓国語読みにした言葉が増えた。
戦後、韓国は独立し、それまで禁じられていた韓国語を話せるようになったが、それまで高等教育を受けた人たちは、日本の漢字語をそのまま使っていた。その人たちが作った法律用語はまったく日本の法律用語と同じであった。さらには、新しい西洋の文化を取り入れる際も日本語に翻訳された書籍を韓国語に訳したので、さらに日本語の影響は強くなった。
そうした中、韓国語の研究者たちは言葉の浄化作業を地道に進めてきた。こうした努力の結果、植民地時代に日本語にとって代えられていた純粋な韓国語をほとんど取り戻すことができた。しかし、言葉というものは一斉に抹消されたりすることはない。公共の場では日本語の使用は少なくなったものの、日常生活になじんでしまった日本語はいまだに日本語だと知らずに使われている。
韓国政府は一九九一年から国立国語院という機関を立ち上げた。語文政策に必要な資料を科学的・体系的に調査・研究し、語文政策の基盤をつくり、国語生活に必要な語文の規定を改定したり、標準語を査定し、国語辞典を編纂するなど、韓国語全般に関して司る機関である。
- 「日本語風の用語」純化資料集 -
二〇〇五年国立国語研究院は、植民地からの解放(独立のことをこう呼ぶ)後六十周年を記念し、日本語風の用語純化資料集を発行した。そこには、「戦後直後から『国語の浄化』と題し、大々的に日本風の用語を韓国語に純化してきた。
それでも、日常生活では、「チラシ、枠、袖なし」や「路肩、代金、忘年会、仕様」などの日本式漢字がまかり通っている。建設分野では「土方、均し」、自動車の整備現場では「キズ、マフラー」などが通用している。さらには縫製、印刷、放送の現場にも残る。放送の現場ではカメラマンが「手持ち」などを専門用語として使い、殺陣を「立ち回り」という。
筆者が会議通訳などで、普通なら難しく思える建設用語や法律用語などが簡単に思えるのは、ほとんど日本語と似ているからだ。資料集を見ると、韓国語だと信じて疑わなかった漢字語がほとんど日本の影響を受けていることがわかる。
漢字語に関しては、行楽、船着場、祝祭、発信、脚線美、残業、集中豪雨、宅配制度、改札口、待合室、売切れ、忘年会、架け橋、間食、欠食児童、掘削機、甲種、見習い、欠席届、決裁、鶏卵巻き、勾配、古参、紺色、根性、空席、旧型、買占めなど。(*1)
*1 ほかに、今週、今回、 挽回、邦画、白墨、 輸入先、輸出高、売店など。
日本語の発音をそのまま使っている言葉としては、カラオケ、空手、顔マダム(看板俳優の意)、バリカン、バケツ、ボタン、分配、パンク、皿、サラダ、刺身、桜、袖なし、段取り、空色、勝負、弁当、寿司、下張り、新品、スリ、十八番、山、あんこ、焼き饅頭、エンコ、おでん、おやじ、ゆとり、わりばし、楊枝、親分、子分、賄賂、上着、いっぱい、汁(韓国語ではなまって「ジリ」と呼ぶ)、チラシ、ふかしなど。(*2)
*2 ほかに、付録、無鉄砲、もち、味噌汁、ミシン、満タン、マンガ、巻き、とんとん(五分五分の意)、てんかん、冷やし、いじめ、大判焼き、たまねぎなど。
日本語で使われている漢字語の場合でも、韓国語で読んでいる場合はほとんど放送禁止用語とはならないが、「忘年会」や「手順」「十八番」など漢字を韓国語読みしていても、放送禁止用語となる場合がある。日本語読みのものはすべて放送禁止用語である。
韓国語に残っている日本語は長い間韓国人が言いやすい言葉に代えられ、訛る場合がある。リュックサックは「ニクサク」、土方は「ノガタ」、炉辺焼きは「ノバタヤキ」、「新しい」は「あだらし」となる。韓国語の特徴として長音をあまり意識せず、二番目の文字で濁音になることだ。そして韓国には二音法則というのがあり、最初の音が「ロ」の場合「ノ」に変わる。
国語純化のために日本語だけがダメだというわけではない。しかし、植民地時代に多くの日本語が韓国語を侵害してしまったため、韓国語で使えるものは韓国語にしなければならないということである。また、日本語だけでなく韓国語であっても俗語、卑語、そして無分別に使われている外来語も韓国語にするのが、国語の純化である。
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